村田 裕樹
むらた ゆうき
1988年東京都生まれ。4年制大学を卒業後、服飾デザイナーをめざし文化服装学院へ。ブランドアシスタントなどを経て2012年に西脇市へ移住。現在は島田製織株式会社で、社内オリジナルブランドhatsutoki(ハツトキ)のデザイン・ディレクション・マーチャンダイジング・販売までトータルに携わっている。
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産地とは、新しい可能性が生まれる場所。
循環のひとつになる、それがものづくり。
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産地の中で服をデザインすることが、唯一の可能性だった
もともと産地に行くという選択肢はありませんでした。でもそれに気づいた時、可能性を感じられるかもしれないと思ったんです。そんな時、産地の生地に出会って新鮮な素材の良さを確信しました。検索でたどりついたのがhatsutoki(ハツトキ)で、社長に「専任させてほしい」と直談判して今があります。産地の中で服をデザインするということが、唯一僕にとっての可能性の発見だったんです。
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hatsutokiらしさは、余白を残した生地づくりから生まれる
hatsutoki(ハツトキ)に関わる業務全般に携わっています。アートディレクションからテキスタイルデザイン、製品デザイン、マーチャンダイジングに営業販売まで。全体を考えながら職人のみなさんとコミュニケーションをとる方が、いいデザインが生まれると思っています。僕が大切にしているのは、素材自体のデザインと、素材を活かす服のデザインを意識することです。生地にはインスピレーションを湧かせるような可能性を孕(はら)んだデザインが必要。余白を残したデザインを心がけています。hatsutoki(ハツトキ)らしい可能性を見せる生地をつくるのは、おもしろいですが難しいですね。
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つくり手と使い手が刺激し合える、それが産地のおもしろさ
工場に入って職人さんと話すことで、日々新しい発見があります。布のつくられ方がわかると、工程や調整を変化させたら見え方がどう変わるかがわかるようになるので、新しい発想が生まれて今までなかったものがつくれるようになります。
また、僕の方からは「ボーダーを細くして」とか「ジグザグを薄くしたい」とか工場でお願いするんですが、職人さんはそんな使い手の感覚をおもしろがってくれるんです。生地のつくり手と使い手が人と人として刺激し合って、いいものが生まれる循環ができる――。現場にいかないとわからないことばかりですが、これって一貫生産の産地ならではの良さだと思います。 -
生地が自然の産物に思えてくる
今は古民家住まいです。まわりを気にせず、夜遅くまでものづくりに没頭できるし、周りの人はやさしいし、居心地がいいですね。
西脇は水が豊かな町。染色もこの水から始まるので、水が循環している中のひとつに生地づくりが入っているイメージです。生地が自然の産物に思えてくるんですよ。このみずみずしさをhatsutoki(ハツトキ)のブランドイメージとしてデザインに落とし込めないかと日々思っています。西脇の自然豊かな産地の中に暮らすことで、そういう感覚が生まれました。 -
仕事も居場所も、自分の手で創り出すもの
田舎の人は遊びを創り出して遊びますよね。自分の頭で考えて、手を動かしてものを生みだす感覚に近いかな。だから、この土地ならではの楽しみを自分で見つけ、ものづくりをしたい人に向いている所だと思います。ここの循環の一つになって、ものづくりができる人ですね。
仕事は創り出すものだと思うんです。だから、この先どんな仕事をすべきかを、産地のみんなと一緒に考えていく。そういう感覚で自分の居場所を見つけられたら、いい仕事ができる場所だと思います。自分の居場所を「ここ」にするのは、自分ですから。