玉木 新雌
たまき にいめ
1978年福井県生まれ。播州織に心惹かれ西脇の地へ。2008年 西脇市内に直営店をオープン後、2016年 現在の場所へ移転オープン。13台の織機で20名のスタッフとともに自ら織りあげる播州織を使ったオリジナルショールやウェアは、常時2,600点以上の作品が揃うshop & labの他、国内150店、海外35店に並んでいる。
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現場とのコミュニケーションから、
tamaki niime の作品は生まれ続ける。
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自分の創りたいものを、どこでどうやったらできるのか~西脇市へ移住した理由
2006年に西脇市に移住しました。それまでは都市に住み、西脇の機屋さんに生地を発注していたのですが、自分のイメージと織り上がってくる生地とのギャップがあり、自分が創りたいものを実現させるために、だめもとで産地へ飛びこんでみようと移住を決意しました。
また、初めて西脇市へ来た時、織物の全工程がちゃんと揃い、機屋さんや現役の職人さんがたくさんいる播州織の可能性を感じました。他産地ではなかなか全工程とはいきません。生産現場に直接行ってみて、なぜできないのか、どうやったらできるのかを現場の職人さんと繰り返しコミュニケーションをとり、現場の事情や技術が解ると、さらなるアイデイアも生まれ、新しいものを創ることができました。
現場で考えずして、良いものづくりはできませんからね。 -
私は、素材をデザインする~播州織だからできること
子どもの頃から洋服は、デザインだけではなく着心地も気になっていました。一日中着ているものだから、心地よさを感じていられることが大切でしょう? 大事にしたかったのは肌触り。綿の織物がいちばんって思っていたら播州織に出会いました。ショールは素材がそのまま作品になる。素材にこだわることは私の原点なんです。
もう一つの播州織の魅力は、織りながらデザインができること。先染めの糸を使用することで、たとえ1色だけを織り込んでも濃淡があったり、平面だけど奥行きを感じるという風に、油絵の凸凹感、水墨画のような濃淡を出したかったんです。播州織はたて糸とよこ糸の組合わせによって、玉虫色のような微妙な色を表現することも可能で、こういった高い技術力も大きな魅力です。 -
はじまりは、ショールとの出会い
ブランドを立ち上げてすぐは、進むべき方向を模索し、試行錯誤の日々が続きました。やわらかさを追求できるもの、また差別化できるものは何だろうと考えていた時、ひらめいたのがショールでした。「よし!ショールでいこう」と一本の柱が決まりました。立ち上がりの時って、この絞り込みが大切で、ショールだ!と、ひらめいた時が、大きな転機となりました。
2011年には、パンツからスタートして少しずつウェアにも力を入れ始め、今ではスカート・シャツ・アウターの他、ニット・Tシャツ・カットソーまでトータルにアイテム提案ができるようになっています。 -
誰も真似できないストーリー
それが「tamaki niime」モノづくりとは、人につくってもらうものではありません。それに、作品は機械を動かす人のクオリティを映し出します。だから、自分で織機を動かしたかったんです。頭の中でイメージするアイディアを、織機を動かし試しながら創造できるのも魅力でした。人に頼んでつくってもらう通常の産地の流れに乗っているだけでは、新しいモノは生まれないと感じていましたから。
最初は、自分で織ることを周囲に反対されたんです。でも私は織りたくて仕方なかった。最初の力織機を入れてすぐ、まだ自分の手で織機が動かせるかどうかもわからなかったんですが、使えたら絶対に何かができる、「いける!」と思っていました。いざ織り始めてみて、他とは違うものを生み出せると確信できました。わざわざ自分が生まれた土地じゃない場所に来て織機を入れ、一から自分の手でつくるなんてストーリーは、きっと他にない。自分が止まらない限り、間違えることはないっていう可能性も感じていました。 -
あたりまえじゃない方法で取組まないと、オリジナリティは生まれない
私はいつも難しいことに挑戦したいんです。簡単にできることは、誰もができてしまう。真似のできないものにすることが、ブランドのオリジナリティです。高い技術力と織物に必要な全工程がある播州織は、まさにこれだと思わせてくれるものでした。自分で織ると決めて作品ができ、足元が確かなものになったことで tamaki niime の流れをつくることができました。
でもそんな今があるのは、何といっても職人さんたちのおかげです。困った時は、すぐ駆けつけて来て修理をしてくれます。tamaki niime では、機械は入れても職人は雇わず、スタッフが職人さんたちから技術を習得することから始めます。これも産地の人間関係があればこそ。感謝しかありません。 -
今の Shop & Lab について
3年前に初めて見た瞬間、ここだって思いました。田舎にぽつんとたたずむ染工場跡。山も川もあり、都会から来てくれたお客様に田舎っぷりを感じてもらいながら、空気のいい場所でモノづくりをしている様子を見てもらいたかったんです。しかもここは、播州織の始祖と言われる飛田安兵衛(ひだ やすべえ)の生まれた地で、全部がつながっている! 3年間思い続けていたら、また縁がめぐってきて、今私はここにいます。
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人の輪をつないだ先で出会える「私らしさ」~これから起業をめざすあなたへ
自分が何をしたいのか、まずは考えをしっかり持ち、自分の本当のオリジナリティを追及してください。そのためには、「もうちょっとできるかも、もうちょっと何かあるかも」と常に深く考えることです。考えながら足も同時に動かすこと。スピード感を大切に、早く動く習慣を身につけることをお薦めします。そしてもう一つ。恥ずかしがらず「教えてください」と、いろんな人にどんどん頼みに行くこと。人の輪はつながっています。いろんなコミュニケーションを広げ、播州という枠組みじゃなく「ものづくり」という視点で取組んでほしいと思います。