相棒は、気まぐれなヴィンテージの力織機
オリジナルにこだわる生地づくり
森口 徹夫
もりぐち てつお
神戸市出身
-
「わしは機(はた)から生まれてきたんや」
周りの機屋が最新式の織機をどんどん導入していく中、大切に守り続けたヴィンテージのシャトル式力織機を、頑固なまでに使い続けた80歳の織職人。
この職人の愛した力織機、そしてその力織機で織られる生地の独特の風合いに魅了され、職人の引退の時、この力織機を思いとともに受け継ぎ、オリジナルの生地づくりから製品、販売までの一貫性を持ったものづくりを開始したデザイナー。
そんなデザイナーのもとで織物を学びたいという意欲を携え、この地へやってくる若者。
播州織産地には、そんな譲れない想いをもった人々がたくさんいる。 -
そんな播州織産地の新たな一員となった森口さんは、「初めて織機を見た時、あんなに荒々しく動いている機械から、あんなに繊細なものができることに驚きました。実際に機械を動かしてみたら、調子が悪くなると一週間くらい平気で止まるんです。そのたび原因を探ることから向き合い、自らの手で修理するというほとんど手織りに近い織機だなと思いました。素材選びから始まり、デザイン、織り、製品、販売まで一貫して行うというものづくりの過程を大事にしながら、こだわりを追求した商品づくりをしているので、すべての工程に携われることがすごく勉強になり楽しいです」と語る。
現在は交流のある職人と言葉を交わしながら、機械の知識を深め、日々織機と向き合いオリジナル生地を製作している。 -
製作工程は手探りだけれど、手探りだからこそ、できあがりの楽しみもやりがいもあると話す森口さん。
「播州織産地の一員になれてよかったと思っています。『仕事で遊ぶ。そして楽しいこと、興味があることを妥協せずとことんやって失敗から学ぶ』という姿勢を大切に、とにかく今は、目の前のことを全力で楽しんでやっていきたい。サンプルづくりに何ヶ月もかけることがあったり、商品になるまでとことん追求したものづくりをしているので、今後も他がやらない手間のかかる作業や、新しいことにどんどん挑戦していきたいです。」
むだな力みも気負いもなく、森口さんは今日も機を織る。