人と人とのつながりを、みんなで育てるのが産地。
やりたいことをまっすぐ求めたい人に、ぜひ来てほしい。

田川 木の実

たがわ このみ

島田製織株式会社 [企画開発室・企画デザイン]

横浜市出身 / 女子美術大学デザイン工芸学科工芸専攻

会社hp : http://shimada-seishoku.com

  • 1. 西脇市へ移住した理由

    最初は、職人になりたいと思っていました。でも、技を磨いた先でモノづくりを発展させるには、技術以上の知識が必要だと考えると、自分には向いていないかもしれないと思い始めて……。そんな中で出会ったキーワードが「繊維商社」。産地でモノをつくる仕事があることを、初めて知りました。長野、北陸、西脇など就活で地方に飛ぶにつれて、地方っていいなと思い始めました。とにかく、自分が興味を持ったことをやってみたかったんです。そこにやりたいことがあれば、地方でも構いませんでした。
    そんな就職活動中に見た就活情報誌の中で、最初にピンと来たのが島田製織株式会社。島田製織にはハツトキという最終製品があるので、会社が何をつくっているのかが明確でした。ブランドを持っているので発信力があるし、アピールする場も増えるはず。会社として将来を考えている、成長できるところだと感じたんです。

  • 2. 現在の仕事

    今は、営業補佐の仕事を教えてもらっています。アパレルメーカーごとの柄の傾向や、求められている生地を自分で調べてサンプルをピックアップするなど、資料をつくって揃えることが主な役割です。6月からは試織に参加する予定で、そこから加工や製織の現場とのつながりができるのも楽しみ。私がデザインした生地を、9月の展示会で出せればいいねという話をしています。
    私の目標は、縁の下の力持ちになること。お客様には見えないけれど、最終製品の大事な基本の部分をつくりながら産地も守っている……そんな黒子の役割を果たしたい。頼られる存在になりたいです。

  • 3. 播州織の魅力、産地の魅力

    他の産地を見学すると、つくることから最後の出荷まで、すべてひとつの会社の中で成り立っていました。最新設備は魅力的だけれど、地域とのつながりも伝統も感じられなかったんです。そこに根付く伝統が、どんどん発展していくことが私にとっての魅力。革新を繰り返しながら伝統を守り伝えていくのが、学生時代、工芸を専攻した「使命」でもありましたから。
    播州織は糸を染めるだけ、糸を掛けるだけ、生地を織るだけ、アパレルへの営業活動を行うだけという、産地の中での分業制。それぞれの分野ごとにプロがいるのはすごく魅力的! そんな体制に、伝統を守っている産地の魅力を感じました。伝統の革新とは、人とのつながりを大切にしながらみんなで育てていくものだと思うんです。この産地に自由さ、穏やかさ、住みやすさを感じるのは、西脇がそんな産地だからなのかもしれません。

  • 4. 西脇市に住んでみて感じること

    就活を始めるまで、播州織を全く知りませんでした。播州織といえばチェック柄とシャツ地だと思っていたら、播州織工房館(*)で細番手の布を見つけたり、播州織から発展しているバリエーションがいろいろあることを知って驚きました。最初は堅苦しいイメージがありましたが、みんなが積極的に活動しながら製品をつくっているのも魅力的で驚きました。また播州織は、いたるところにあることにも気づき、身の回りの物に使える生地なのでいいなと思っています。
    こちらに来てから、組織や素材・加工などについて教えてもらううち、かわいい布っていう見方から「こういう加工があるのか」「こういう素材が入ってるのか」って、目をつけるポイントが変わってきました。自分自身がつくる側の視線になって来たのを感じていて、今は布を見ているのが楽しいです。大学での学びの中で身につけた知識と、今吸収しながら引き出しを増やしている知識とが、いつか合わさって新しいものとして出せるんじゃないかと思っています。昔から、自分のテーマは「向上心」を持つこと。ここで、できる限り成長したいです。

    *「播州織工房館」:かつての織物工場を活用した工房&アンテナショップ。シャツ、ジーンズ、ストール、バッグなど播州織グッズを販売。

  • 5. 播州織産地で働いてみたい人へ

    勇気をもって「地方」という外に出てみると、おもしろい会社がいっぱいありました。関東じゃできないことや、そこの土地でしかできないことが地方にはあります。お金も時間も労力もかかるけれど、勇気を出して好きなことを求めて地方に行ってみてほしい。「いいな」と思った直感だけで、私はここに来ましたが、そういう直感も大切なのかもしれません。仕事を続けるんだったら、やりたいことをどんどん追い求めるほうがいい。やりたいことをまっすぐに求めるのは、今だからできることなので。好きなことを追い求めたい人は、西脇に来ると楽しいですよ。