生地の一枚一枚に、表情や機能が加わっていく。
加工場ならではの生地づくりを追いかけたい。

梅村 綾

うめむら あや

姫路市出身 / 大阪モード学園ファッションデザイン学科卒

  • 1. 西脇市へ移住した理由

    在学中の研修で、初めて播州織を知りました。もともとテキスタイルに興味があり、柄物のテキスタイルデザインがしたかったんです。当初は、プリント柄のテキスタイルデザインに取り組もうと思っていました。でもジャガード織を見て、織物でもこういう表現ができるなら、ぜひやってみたいと思ったんです。ジャガード織の中でも、特に印象に残っていたのが「クラッシュ加工(*)」。播州織工業協同組合なら、個性的な加工も含めたテキスタイルデザインに取り組めると思い、就職を決めました。

    *「クラッシュ加工」:よこ糸の配列を曲線に移動させる技術(クラッシュと命名)で、織り上げた柄に豊かな表情・紋様を加えることができる世界に類を見ない加工方法。繊維工業技術支援センターとの共同開発で、2007年「ひょうごものづくり技術大賞」兵庫工業会長賞、第2回「ものづくり日本大賞」優秀賞をそれぞれ受賞。

  • 2. これからの仕事

    ようやく入社から2か月が過ぎ、正式な配属が決まったばかりです(2018年6月現在)。
    これから私が働く工程管理課では、生地が規格に沿っているかどうかを確認するのが仕事になります。例えば、洗濯での収縮率を3%以内に抑えるという基準を満たしているかどうか確かめるため、5回も10回も洗濯と乾燥を繰り返すなど、様々な試験を行って生地をチェックします。
    そんな工程管理課の仕事とは別にデザインにも携わる予定なので、管理課での生地の学びを活かしながら、デザインにも取り組んでいこうと思っています。私が一番魅力を感じているのは、想像もつかない複雑な柄が表現できるジャガード織。あまり目にしないような柄をデザインしてみたいです。デザインを通して「これだけいいものが、日本でできるんだよ」って、もっと多くの人に播州織を知ってほしいと思っています。

  • 3. 播州織の魅力、産地の魅力

    専門学校3年生の時、インターンシップを利用して西脇市の産元商社へ来ました。そこで、生地づくりとはデザインをして終わりではないこと、いろいろな過程の中でいろいろなこだわりがあることを知りました。思っていたより複雑で難しいけれど、やりがいはあると思ったんです。織物工場、加工場、染色工場、サイジング工場などを見学に回る中で、それぞれの分野にプロがいて、みんながひとつの産地に集まっているのは、人と人のつながりも大事にできるからいいなと思いました。各生産工程の作業は分業制で行い、それらの工程が産地の中に集まった一貫生産体制の播州織ならではの魅力だと思います。
    播州織はとにかく質が高い! 加工前・加工途中・加工後にたくさんの試験や検査があり、合格した生地だけが出荷されます。色落ちしにくい、破れにくい、肌触りがいいのはもちろん、糸の染めムラひとつない美しい生地です。この品質の高さは、日本だからこそかなうものだと思います。

  • 4. 西脇市に住んでみて感じること

    ちょっと田舎だと思ったけれど、暮らしてみると不便は感じません。都会に比べると、時間に追われることのない、ゆっくり、のんびりした空気感を感じます。知らない人でも、高校生までも挨拶をしてくれることに驚きました。とにかく、人がやさしいんです。何を尋ねてもすぐに答えが返ってきますし、いろんな人が手を差し伸べてくれます。入社直後に広い工場の中で迷った時も、どこからともなく人が現れて「どこに行きたい?」って教えてくださったんです。仕事はしやすい環境だと思っています。

  • 5. 播州織産地で働いてみたい人へ

    初めて織物工場に行った時、織機の大きな音と綿ぼこりの中で、汗だくになって働かれている姿を見てすごいと思いました。染色工場では、何色あるのか想像もつかないくらいたくさんの色を解析する人や、私には色の違いの区別がつかないほど繊細な色を作る人がいて、それぞれの仕事ぶりに感激しました。生地に興味があれば、あらゆる生地が見られる加工場はおすすめです。入荷の時にはどれも同じように見える生地が、出荷するときには全く違った顔に出会えるのが加工場のおもしろさ。産元商社では、体験できないことばかりですよ。